森武道具のこだわり
手刺剣道具
手刺剣道具の芯材には真綿と毛氈を使用して、激しい打突に耐える堅固さを持つと同時に柔らかさとしなやかさを兼ね備えた防具です。
先人より受け継がれた日本伝統の技術を結集した美しさあふれる剣道具です。残念なことに今出回っている手刺剣道具ほとんどの芯材は、ミシン刺し剣道具と同様なフェルト芯が使われています。
何故でしょうか?
真綿・毛氈芯材の手刺は、フェルト芯材より 3 倍以上手間が掛かるからです。
●森武道具の手刺剣道具は、総て真綿と毛氈を芯材として使用しています。
真綿は多くの空気を内部に貯め込み、激しい打突に耐え、打たれても痛くありません。包装材 ” エアクッション ” の原理です。真綿と毛氈の持つ柔らかさとしなやかさが使い良さに繋がるのです。
●森武道具の手刺剣道具は、長刺(本刺)を使用しません。
裏糸の出ている部分が長いと、面布団の ” 天 ” の部分は内側に曲げられますから、裏糸は緩むことになります。面布団の ” 裾 ” 部分は外側に曲がりますから、裏糸に引っ張られ外側に曲がり難くなります。
●森武道具の手刺は、「爪刺」です。
親指と人差し指の爪で、刺すポイントを押さえて締め込みます。締め込んだ部分を、緩まないように糸を引いて刺したものが「爪刺」です。
裏側の糸目を小さくして、しっかりと布団の中に糸を緩みなく締め込んでいます。手で面布団の刺方向の直角に触れてみて下さい。布地は触れても刺糸は布団の中に枕んでいます。
「爪刺」は、布団布地は長期の使用により擦り切れても刺糸は切れず、弾力が長期間維持することができ、布団本来の防具の役目を果たします。
「旺山」手刺剣道具
「旺山」手刺剣道具では、本毛氈 ( 古代緋毛氈 ) を芯材に使用しています。
古代緋毛氈は、毛氈が、数 10 年以上に渉り使用され、山羊・羊などの毛にセルロース質が飛んで樹脂分が消滅した、粗い繊維素のからみだけで成分をなす厳選された素材です。
古代緋毛氈に真綿を挟み、手刺した布団が「旺山」です。
古代緋毛氈は、厚さに凸凹があり、手刺の手間は、フェルト上の現代緋毛氈を使用した布団の手刺より 3 倍以上掛かります。 武道具の厳選した古代緋毛氈は、主に明治時代のものを使用しております。
鹿革は、チビ小唐の燻し茶鹿革・燻し紺革を使用しています。
毛氈
毛氈は、羊毛・山羊毛・ラクダ毛などの獣毛の繊維に湿気、湿度、圧搾、摩擦を加えて平板上に絡み合わせて作り、一種の織り上げたようなものとして、古くから中国より渡来した高級な敷物です。
多くは、深紅色に染められた緋毛氈といわれていますが、中には藍染めや花模様などに捺染した花毛氈もあります。
毛氈の使い古したものは、真綿と共に組み合わせて、昔より手刺の剣道具布団の芯材として使用されてきました。毛氈入り手刺剣道具は、軽く、使用するほどに身体になじみ、衝撃吸収性・肌触り・耐久性等は他に類するものがない使用性を誇っています。しかし、現在では残念なことに、古い毛氈は極めて手に入り難くなっています。
鹿革
鹿革は、多くの革素材の中で繊維が一番細かく他に類するものがありません。 革の繊維は縦横無数に入り組んでおり、これが保湿性・吸湿性を持ち、クラリーノの手の内革のヌルヌル感がありません。 道具には木目の細かい繊維で小さいサイズの小唐が美しい表面を誇りますが、残念ながら近年は輸入されておりません。
●森武道具の使用する鹿革は、 ” チビ小唐 ” です。
チビ小唐は広げた新聞紙より一回りほど小さいサイズです。小唐鹿革より木目が細かく丈夫で最上の材料ですが、非常に扱い難い素材です。 森武道具は、輸入禁止前よりこの小唐革を確保してきました。
●燻し鹿革
茶鹿革は、鞣した白鹿革を燃やした藁の煙で燻して作られます。 藁の油が染み込み(加脂)、汗や油に対して丈夫になり、上品な色合いを醸し出します。今では作業が大変なため、茶色に染色した茶革がほとんどです。
燻し茶鹿革を藍染めした鹿革が、 ” 燻し紺革 ” です。藍染めはアルカリ性で、アルカリ性に弱い鹿革を燻すことにより酸性化することで、丈夫さと保ちます。 現在ではこの製法は極めて少なくなりましたが、森武道具では、旺山手刺剣道具に使用しています。
革新技術
森武道具は、東レの開発による抗菌消臭繊維糸を織り込んだ布地を、初めて防具の世界に取り入れ、高い評価を得ています。
併せて芯材に抗菌綿を入れ、二重にその効果を追求しています。
画期的な消臭繊維「コスメル」を、肌の当たる部分に抗菌・防臭布団綿「セベリス」を、頬輪と布団の中に使用。
吸湿性、復元性に優れ、サラッとした爽快感です。
竹刀の握りが“楽”で使い易い
鹿の毛がしっかり詰めてあるので、竹刀の激しい打突から“拳“を守ります。
使いやすい甲手を作るのは簡単です。甲手の芯材を抜いて少なくすればよいのです。しかしこんな甲手では痛くて手を痛め、防具とはいえません。複雑な動きをする手には細かい骨が詰まっています。甲手の芯材をタップリ詰めて手を保護し、使い易さを求めた甲手が“楽拳”です。
●鹿毛
鹿毛は、ストロー状になっています。毛の内部に空気を貯めてクッションとなり、竹刀の打突も痛くないのです。手のなじみも良いので、甲手の芯材としては最も優れています。日本伝統の先人達の知恵です。ただ、価格も高く、使うのには熟練を要します。今は、合成繊維の綿が多く使用されています。森武道具の甲手頭の芯材は、総て鹿毛入りです。
I・B・B面金
面は剣道家の大切な頭部を保護します。特に面金は重大な事故を防止するものとして、より良い面金が求められます。
面金はいたずらに軽くすれば良いとは限らず、軽くすればする程に、竹刀の打突による衝撃が強く感じられます。けれども重い面金は頚椎部にかかる負担が多くなります。この両者相反する特性の良いところを取り入れて、長年の研究開発・実験を重ねて完成したのがI・B・B面金(最適理想重心面金)です。
I・B・Bとはアイデアル・ベスト・バランスの略称で、面に於ける最も理想的な位置に重心を置くように設計された面金です。従来の当社の面金に比べて、重心位置を上部に17m/m、後方に7m/mずらすことに成功しました。
I・B・B面金では面の重心と頭部の重心を一致させる事により、面との一体感が更に増し、体の動きにムダが生じません。強度では直進突圧力に対して、物見部分(目の当たるところ)で、1m/m拡大するのに、当社従来比でジェラルミン面金11.5kg、チタン面金25.3kgも強度を増大させており、対衝撃力による力積値(痛さを感じる力の値)の減少に多いに役立っています。
最高の技術により生まれた新しい面金を是非ともお試し下さい。